No.0139

米国有力企業の動きから不動産価格を見ると…

 東京のマンション価格の上昇が続いている。先日、中古高級マンションを集めた新聞折り込み広告を見ていたら、渋谷、赤坂、表参道、六本木などの高層マンション・駅近マンションは、坪1,000万円以上の価格が珍しくなくなっている。山手線をちょっと外れた地域でも、平米100万円(例えば70平米のマンションで7,000万円)が普通になっている。マンション価格は、2000年前後にバブル崩壊後のボトムをつけたと認識しているが、その当時やリーマンショック直後は、山手線内で平米100万円程度の価格のマンションはいくらでも見つけられたものだ。
 このような上昇の背景は、歴史的な低金利、建設資材の価格上昇、新築マンションの供給減少などがあると思われるが、それらの理由をもってしても、今の価格が適正か否か、これからも上昇が続くか否かの答えは見つからない。
 私は、その答えを導き出す有力な材料として、米国有力企業が従業員の働き方に関してどのようなスタンスを採用しているかを重視している。例えば、グーグルはもともと、社員のオフィス勤務復帰に積極的であった。アマゾンも社員を徐々にオフィスへ復帰させる方向に動いていると報道され、ゴールドマンサックスも、全従業員のオフィス回帰にカジを切り始めたと報じられている。つまり、日本よりも柔軟な勤務形態を許容していると見られる米国の中で、一流の人材を数多く揃えた代表的企業がオフィス勤務を重視している姿勢が見て取れるのだ。物理的場所に集まることでの社員の交流や議論を、米国企業が重視していることの表れだと思う。
 ところで、日本ではどうであろうか?上記のような米国との共通要因ももちろんあるだろう。加えて、ある日本の有力企業のトップが、日本社会では上司の部下による監督が必要と話していたことが興味深い。一般論として、企業の収益に大きく貢献している社員の割合は全体の2割くらいにすぎず、残りの8割の業績は平均以下という逸話はよく耳にするが、それが正しいとすれば、リモート勤務による生産性向上は容易ではない、特定の場所に集めて働かせる必要がある、ということになろう。
 そうであれば、人類がいつかはコロナウイルス問題を克服できるという前提の下では、社員は究極的にはオフィス出勤を余儀なくされるのであろう。そこまで見据えれば、オフィス空室率は、一定以上は上昇しないし、オフィスが都心にあるとの前提では都心の住居の価値が低下する可能性も低い。
 このロジックに、建設資材の価格上昇という流れが加われば、都心マンションの値上がりはさもありなんということになる。住宅に関する「賃貸派」の形勢は、ますます悪くなりそうだ。

大木 將充