No.0147

2022年の「第34回人気アナリスト調査」結果への雑感①(総論)

 2月27日の日経ヴェリタス誌で、恒例の「人気アナリスト調査」(アナリストランキング)が発表された。ランクインされたアナリストの皆様、おめでとうございます。そして、この1年間お疲れ様でした。

 本稿では、今回のランキングで気づいたことを雑感として述べてみたい。

 まず会社別ランキングについて。

 1位大和証券、2位SMBC日興証券、3位みずほ証券となっている。3位までをこの3社が占めることについては、特に違和感はない。そして、この3位までのメンバーは、奇しくも「朝のモーニングコールを行っている会社」という共通点がある。私も各社のモーニングコールを聞く機会が多いが、そこで話をしているアナリストは強く印象に残る傾向がある。

 ここで、私たちのような運用会社(バイサイド)の人間が、この調査に「投票する」という行為にフォーカスしてみたい。日経リサーチさんから投票用紙が送られてきてから締め切りまで、期間は年始の2週間程度しかない。その間に、投票用紙を「埋める」という作業が必要になるが、これは結構な労力がかかるのだ。今年のように、大発会から強烈なバリュー相場が始まり、多くの運用者が自分のポートフォリオの見直しを迫られるような忙しい場合には、なおさら仕事の中における優先順位が下がり、最後は「どうでもいいや」という気持ちで投票を行わないというケースも多かったと思われる。現に、投票率は、前年の67.9%から60.2%に低下している。ちなみに、私は、自分の仕事をいったん中断してでもこの調査に参加するという強い意思を有している。なぜなら、私も2009年までは投票される側のアナリストであり、この結果の重要性が骨の髄まで浸透しているからだ。お世話になった方には、少しでも恩返しをしたいという思いが人一倍強いのだ。そんな私でも、今年は投票が締め切り間際となった。だから、少なからずの投票権者が投票を行わなかったであろうことは容易に想像できるし、それもやむをえなかったかもしれない。そんな状況だから、よほどの暇のある人か、ランキングに思い入れの強い人を除けば、投票用紙を埋める作業には短時間しか割くことができない。だから、投票者はお世話になったアナリスト、印象の強いアナリストに優先的に投票することになる。セクター毎に三人まで投票でき、そこでは、お世話になった人にまずは優先的に投票することになる。一方で、証券会社の戦略的には「印象の強いアナリスト」を増やすこと、言い換えれば、「アナリスト一人一人の印象を強くすること」が重要になる。なぜなら、2位、3位の欄に誰の名前を書くかを決める最重要ファクターは、印象度になると思われるからだ。現に私も、2位、3位欄の名前入力において、「印象」に左右された点は否定できない。しかし、それは、必ずしもいい加減な印象ではない。例えば、過去1年のモーニングコールを思い出して、「〇〇さんは多く出席してタイムリーな話をしていたな」といった実績に連動する印象を重視して名前を書いたりしているのだ。

 そう考えると、モーニングコールの重要性がわかるであろう。その印象によって、1位ではなくても2位で名前を書いてもらえたり、3位を誰にしようかと悩んだ時に選んでもらえたりする確率が高まるのだ。

 もう少し論理的に見てみよう。今回のランキングを見ると、500点以上取ると限りなく1位に近づき、600点取ると1位がほぼ確実になることがわかる。500点以上を獲得して1位になれなかった人は4人しかいないのだ。投票者は829人だから、その3分の1の人から票を取り、1位、2位、3位に均等に投票されたと仮定すると552点になって、ほぼ1位が確定する。こう考えても、2位と3位に入れてもらうことの重要性がわかるであろう。

 会社別順位の話に戻ろう。4位は野村證券、5位は三菱UFJモルガンスタンレー証券。この2社が、上位3社から大きく劣後するとは思えない。やはり印象度の効果は大きかったのかもしれない。

 一方で、この差が、印象度の差だけではないかもしれないという可能性も考える必要がある。総合部門も含めて1位のアナリスト数を見ると、大和13人、SMBC日興証券9人、みずほ証券6人、野村證券3人、三菱UFJモルガンスタンレー証券2人となっている。この順位は、会社別順位とぴったり同じである。そして、1位のアナリストになるには、ただ印象が強いだけでは不足であり、投資家のリターンに貢献した人、リサーチの質が高い人ということになるので、真に実力が高い人である要素が強くなる。その意味で、大和証券やSMBC日興証券の看板アナリストは強力な実力者を擁していると考えられ、逆に言えば、他の証券会社は真の実力者を養成・獲得する必要は高い。

 以上を考慮すると、証券会社の立場から、順位の向上・維持を図るためには、実力者を一定程度確保するという「教育・採用面」と、投資家の印象度を強めるという「マーケティング面」の両要素の充実・充足が必要になると言えるのではないか。

 最後に、これは以前のレポートでも述べたが、「エコノミスト部門」がなくなった理由は何なのであろうか。今年は例年以上に、インフレや金融引き締めといったマクロ要因がセクターや銘柄毎のリターン格差を生んでいる。マクロ経済を分析するエコノミストの重要性はもともと高いと考えるが、それはますます高まっていると思われる。日経リサーチさんに対しては、是非ともエコノミスト部門を復活するよう、これからも強く訴えていきたい。各証券会社も、この点は一致団結して求めていってほしいと強く願っている。

 次回以降のレポートでは、もう少し個別の点について言及していきたい。

以上

大木 將充