No.0135

著書出版に関する雑感…フィードバックとして励ましも批判も有難く受け止めます

 世の中から、老害というものはなかなかなくならない。経営者の中でも、引き際を誤ったり、一族を厚遇して晩節を汚したりする例は枚挙に暇がない。
 老害が生ずる主因は、自分を叱ったり批判したりする人が年々少なくなる点にあると私は考えている。つまり、自分はあまり成長していなくても、目下の人間の割合が年々増加していくにつれて、怒られたり批判されたりする機会よりも、おだてられたり持ち上げられたりする機会が統計的に増えていく。凡人は、そのことをもって、自分が偉くなったと勘違いしがちなのであろう。したがって、賢く生きるには、その統計的な不正確性を微調整する努力が必要なのだ。
 私も、若いころは、先輩や上司に毎日のように怒られたり、指導されたりしたものだ。ただ、私は新入社員の頃から、そのような𠮟責や指導は、基本的にありがたいと受け止めるようにしてきた(ふざけるなと感じ、ぶっ飛ばしてやろうと思ったことも何度かあったが)。その根源には、新卒社員として銀行に入行したときの社内報に「新人は何でも聞ける特権がある」との記事を見つけたことにある。私は、その記事を拡大解釈し、若いころはわからないことは何でも聞くべし、怒られたり注意されたりするのは自分を高める絶好の機会、と考えるようにしてきた。そして、私も50代を過ぎて、叱られたり批評されたりする機会がさすがに大幅に減ったと感じている。だから、できるだけかつての先輩や目上の方々と接して、率直な指摘を賜り、自身の成長阻害要因を排除しようと努力している。
 その中で、この3月に「日本株爆騰!80年代バブルを超える大相場が来る」を出版させて頂き、ネットの書評や読者アンケートで、ストレートな感想を多数頂けるという貴重な機会を得た。私としても、本の性質上、拙速を否めないことは重々承知している中で、高い評価も辛らつな批評も、ありがたく受け止めさせて頂いた。このように、普段接したことがない皆様から頂く感想は、偏りのない正直なものであり、そこに自分の気が付かない欠点や見過ごしてきた点が隠れていると思う。もし、再び本を書く機会があれば、皆様からのご指摘を真摯に受け止めて、よりお役に立てるようにしたい。私は、自分がファンドマネジャーを引退したら、自分の人生の最後にもう一度、投資関連の本を出したいと考えている。その中には、今回の著書と比較にならないほど濃密で、私の職業人生の総決算と呼べる内容にする自信があるので、乞うご期待下さい。
 ところで、今回の著書に関し、私にとって、納得のいかないご指摘が1件だけあった。たくさんのご指摘の中で、たった一つだけである。それは、私を「左翼呼ばわり」しているご感想だ。ちなみに、私のことをよく知っている先輩に、このことを話したら、大笑いしていた。政治的信条をストレートに述べることは避けよう。ただ、私は野球の試合に出るなら、レフトよりライトを守りたい。

大木 將充