No.0126

「流動性」で劣る投資信託のリスク

米投資会社アルケゴスにまつわる金融機関の損失問題が話題になっている。
私がこの問題を見て考えたことは、投資信託にとって「流動性」のリスクがより重要になっているということだ。どんなに株価が上昇しても、その利益を確定するためには「売却」が必要になる。また、株価の下落が続いてポジションを縮小するためにも「売却」が必要だ。つまり、投資信託にとって、「売りたいときに短期間で売れる」ことが、極めて重要な要素となっているように思われる。
私は、2018年12月の世界的な株価急落で、中小型株の流動性枯渇を目のあたりにして以来、この「流動性」という側面をより重視するようにしている。具体的には、どのファンドにおいても、保有株式残高の8割程度は1日で無理なく売却できる体制を目指している。ロングショートファンドである本ファンドについても、ロングサイド・ショートサイドともに通常の環境下を前提にして、1日で保有の9割前後を売却できると試算している。多少のリスクが加わっても、少なくとも7~8割は1日で売却できるであろう。
そのような観点から、他社を見ると、1日で2~3割程度しか売却できないように見受けられる日本株投資信託が少なからずあるように思われる。仮に、そのような投資信託で何らかのレピュテーションリスク(マイナスの評価や評判が広まるリスク)が生じて、1日で残高の3割とか5割の解約が出たら、その全てには対処できなくなる。加えて、そうした投資信託の保有銘柄の売り圧力が高まるから、銘柄が重複する他の投資信託の運用成績にも影響が否定できなくなる。そのようなリスクを回避するには、キャッシュを多く持つか、流動性に十分な配慮を払ったポートフォリオを組むしか方法はないが、前者の場合には、お客様から預かったお金の何割かを寝かせる形になるから、有意な機会損失が生じる。また、流動性に配慮したポートフォリオを組むには、銘柄分散が不可避になり、より多くの投資対象を見つける必要性が出てくる。だから私は、キャッシュ比率は極力少ない形にする一方で、投資ユニバースを意識的に狭く設定することはせず、上場株式から広く投資対象を選ぶ形をとっているのだ。
結局、「流動性の確保」と「幅広い投資対象」は、一つの線でつながることになる。私の運用するファンドでは、この2つを愚直に追求しているし、これからもそれを続けていく所存である。

大木 将充