No.0112

「前提」と「結論」を巧みにすり替えるテクニカル分析には存在意義はない

現在の株価が日経平均株価で23,000円程度だと仮定して、以下の文章をお読み頂きたい。その株価水準で、テクニカル分析かぶれの市場関係者が、こんなことを語っているのをよく耳にしませんか?
「日経平均株価が24,000円を超えてきたら、それは強気シグナルなので、25,000円の可能性も見えてくる」
私に言わせれば、こんなに安易で、空疎で、無価値なことを、よくも平然と語れるなという印象だ。もう少し理論的に批判すると、このようなことを述べる輩は、何らかの予測をしているふりをしているが、それは何ら予測の体をなしていないのだ。日経平均株価が23,000円の段階にある時は、まじめな投資家であれば、「24,000円まで株価が上昇するか」を考えながら、運用を行っているのだ。
しかし、上記の発言は、本来的に「24,000円」が「結論」として語られるべき水準であるところを、勝手に「前提」に変えているのだ。市場関係者が強い関心を寄せている「24,000円まで上昇するか」という問いには、1%も答えを出していない。さらにいら立つのは、24,000円まで上がれば、今よりは25,000円まで上昇する可能性が高まるという、少し優秀な幼稚園児でも「感覚的に」言えるようなことを、恥ずかしげもなく「理論的な風采をかぶせて」述べていることだ。
こういう輩は、往々にしてトレンドフォロー的なことしか語れない。日経平均株価が2018年12月に20,000円を割った時や、今年3月に16,000円前後まで下がった時には、今後の株価に途方に暮れる投資家を尻目に、馬鹿でも語れるような下値リスクの可能性を力強く語っているのをよく耳にした。いずれの場合も、株価が結局は23,000円レベルまで上がったが、その事実との比較で、少しでも近い予測は全くと言ってよいほどできていないのがテクニカル分析なのである。
弊社では、2018年12月や今年3月の急落の直後に、既に日経平均株価で23,000~25,000円程度への戻りをメインシナリオとして予想しており、だからこそ、その株価リバウンド局面で、相応のリターンを確保することができた。
私は、ファンドマネジャーである限り、冒頭に記したような、「前提」と「結論」を巧みにすり替える形の有害無益の予想を出して飯を食っているような連中の話は、100%参考にしないことを、ここで明言します。

大木 将充