No.0101

バリュー株とグロース株の区分に拘泥する愚…
もう一つの軸を加えて考えるべき

7月の相場、特に7月中旬までの株価は、船酔いになりそうな、これまで経験したことがない相場であった。全体の株価変動が大きかったわけではない。グロース株とバリュー株の動きが反比例する形で、日替わりに各々が大きな変動を繰り返し、日々のリターンの変動がこれまで以上に大きくなった。
この動きの背景は、概ね想像できる。3月中旬の株価ボトムの水準から、コロナ後の経済活動正常化への「期待」を十分に織り込んで株価が上昇してきたため、コロナウィルスの感染状況とコロナウィルスに対するワクチンの開発状況に関する悲喜こもごものニュースが流されるのに応じて、経済正常化への期待と、経済停滞への不安が、日替わりで市場において台頭していたのだと推測される。そして、正常化への期待が高まると、コロナウィルス問題前の状況への復帰が意識されてバリュー株が買われ、不安が高まると、コロナウィルス問題の影響を受けにくいグロース株が買われるという状況になったのであろう。
それはそれで理屈はつくのだが、私が気になったのは、その動きがあまりにも機械的に見えたことだ。上記の期待と不安に応じて、厳密にはコロナウィルス問題との関係が深いか浅いかにかかわらず、期待の高まりで「バリュー株に分類される株」が買われ、不安の高まりで「グロース株に分類される株」が買われたという印象だ。しかし、日本株のバリュー・グロースの区別は、あくまで相対的なもので、一般の人々が認識する姿とは異なっている。具体的に言うと、私たちの多くが成長株と見る株は、ほぼ漏れなくグロース株に分類されるが、バリュー株に近いと一般人が思うものでグロース株に分類される株が少なからずあるのだ。つまり、日本株は、少数の「真の成長株」と、大多数の「非成長株」に分ける方が自然であるのに、そうなっていないということである。そうした、人々の「認識」と、クオンツによる「無理やりの分類」が乖離する形で、後者主導の株価上下動が起こっていたように思われる。
仮に機械的・クオンツ的なバリュー・グロースの分離を百歩譲って認めるにしても、もう一つの軸、つまり「withコロナ時代のポジティブ銘柄・ネガティブ銘柄」という軸を加えた4象限で分類した方が、私は実態に即していると考えている。このような視点で日本株を見ると、「バリュー株、かつ、withコロナ時代のネガティブ株」に属する最低ランクの株が極めて多くなると認識している。その代表格は、鉄道会社である。鉄道会社をバリュー株と仮定すると、全ての会社が「withコロナ時代のネガティブ株」になると思われる。コロナウィルス問題前に、ディフェンシブ、かつ、多少の成長可能性のある株と見られ、様々な角度から買い目線で見られていた鉄道株は、彼らの運営する鉄道事業、不動産開発事業、ホテル事業、小売り事業の全てがコロナウィルス問題の悪影響を受けるという意味で、最も投資しづらい株の一つになり下がったように思われる。
市場関係者の多くは、いまだにバリュー・グロースという単純な枠組みでモノを見るが、ここに大きな落とし穴があると思われる。特に、「withコロナ時代のポジティブ銘柄・ネガティブ銘柄」で見ると、大多数の銘柄がどちらかといえばネガティブ銘柄の方向に分類されることには注意が必要だ。 こう考えると、インデックス連動型の投資というものが、いかに不合理なものかおわかり頂けるであろう。少数の有望銘柄を、大多数の非有望銘柄との抱き合わせ販売で買わされているようなものだからである。

大木 将充