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高層マンションは、買いか?①

地震国の日本で増える高層マンション

筆者が外資系証券会社に勤務していたのは東北大震災前の2009年までであるが、その頃も時々地震は起きた。その際に印象的だったのは、外国人の怖がり方だった。地震が起きると、日本人が「またか」という感じで粛々と仕事を続けている中、外国人は慌てふためいていた。確かに、米国東海岸や欧州では、地震がほとんど起こらない。そう考えると、外国人が地震を怖がるのも、よくわかる。
その上で、よく外国人に、「なぜ日本では地震が多発するのに高層マンションがたくさんあるのか」との質問を受け、困った経験がある。
東北大震災直後は、高層マンションのモデルルームは閑古鳥が鳴き、中古市場では高層マンションの売りが多発した。しかし、現在は、東京オリンピック決定の余波もあり、湾岸中心で高層マンションが売れていると聞く。また、鉄道網の発達で恩恵を受けた武蔵小杉のような郊外でも、高層マンションの人気が高いようだ。
実は、私も数ヶ月間だけ、30階建ての30階の部屋に住んだことがある。冷やかしで申し込んだURの新築賃貸マンションに40倍以上の倍率の中でたまたま当たってしまい、取り敢えず住んでみることにした。そのマンションからは、晴れた日には、東は房総半島が鳥瞰でき、南側には羽田航空が見えて飛行機の離着陸がはっきり確認できた。東京湾には、ゆったりと船が航海しているところが見えた。それらの景色を眺めているだけでも、十分楽しめた。特に、朝日の迫力には驚いたものだ。地上よりも有意に大きく見える真っ赤な太陽が、東の空から上がってくる姿は壮観であった。取り敢えず、コスト的な限界もあり、数ヶ月で引き払ったが、最後に出るときは大変寂しかった記憶がある。ここまでは、高層マンションに対する、楽しい思い出である。

高層建築物での地震…低層の建物とは異質の恐怖

ところで、上記のように高層マンションを借りていた前後に、高層オフィスで2回、震度3~4程度の地震に遭遇したことがある。
最初は、溜池にあるアークヒルズの35~36階で働いていたとき。このときは、地震の揺れが大変ゆっくりとしていた。そして、地震が収まった後も、ビルはその余韻でゆったりとした揺れを繰り返していた。このゆったりとした揺れというのは、地上や低層建築物にいる場合には味わうことはできないし、ある意味で地震の振動を抑えるビルの構造が機能していることの証左なのであるが、小刻みに揺れる一般の地震とは異質の怖さがあった。
2回目は、サンシャイン60の60階。ここは、レストランになっていて、その時もそこで食事をとっていたのだが、ここでの怖さは忘れられない。窓から外の景色を見ていると、その揺れに応じて景色が変わるのだ。その景色の変化は、地震の揺れ以上に「今、高層ビルで地震に遭遇している」という自意識を喚起させ、恐怖で外が見られなかった。
いずれも、実害はなかったのだが、地震と高層ビルの関係を深く考える重要な契機となった。

地震が起きても耐えられるかが、高層マンションを買う上での一つの基準

世の中には、富士急ハイランドのFUJIYAMAが平気な人もたくさんいるし、私のようにやや高所恐怖症かつジェットコースターがあまり好きではない人間もいる。したがって、高層マンションで地震が起きてもへっちゃらという人もいると思われ、地震のリスクがあるから高層マンションに住むのをやめた方がいいとは言うつもりはない。また、最近の高層マンションの制震・免震の技術の進化はすばらしく、長周波地震が長時間続くようなケースを除けば、倒壊・毀損するような事態はまず想定できない。最近シンガポールを訪れたとき、日本のゼネコンが建築した建築物の信頼性と人気が高いことを聞き、同じ日本人としてそうした点を誇りに思っている。
ただし、老婆心ながらに申し上げると、多くの人は、高層建築物内(特に高層階)で地震に遭遇した経験はないであろう。その意味でも、少なくとも、高層マンションで地震が起きたときの揺れが、自分が快適に生活する上で許容範囲内にあるか否かをチェックした上で、購入を検討すべきであろう。
なお、筆者は、地震の揺れ以外でも、高層マンションでの居住に関し、やや注意したほうがいいと思っている点がある。この点については、次回のレポートで述べてみたい

大木昌光