No.0136

不動産購入の際は、株式投資との共通点をよく認識しよう

 最近は、高校生や大学生の間でも、株式投資熱が高まっているようだ。これは、大変素晴らしいことだと思う。世の中の大人(特に日本人に多い)には、「汗水たらして働くことが大切」とか「金融は虚業だ」とか言って、資産運用を批判する人が今でも多い。そのような人が、退職後に、資産運用の成果としての年金をもらいながらぬくぬく生活しているというブラックジョーク的現実を、若い人はしっかりと見つめる必要がある。その意味でも、若い頃に、資産運用の象徴的存在としての株式投資を勉強することは、大きな意味がある。特に、私は、株式運用の勉強の成果を、不動産投資にほかならない住宅購入に際して大いに発揮してほしいと考える。つまり、家は、最初からずっと住み続けることを前提にするのではなく、人生のステージの変更の中で、何度も住み替えることを前提にして買うべきなのだ。それは、言い換えると、自分のみならず、他の多くの人も欲しいと思える立地・仕様を選んで買うべきということになる。この、「他の多くの人も欲しい」と思えるものを買うという視点は、株式市場でもそっくりそのまま応用が利くのである。そして、そこに、「他の人がまだあまり気づいていないが、近い将来に欲しくなる」という点を加えると、なお良い。その場合には、「安く買える」という利点が加わるからだ。
 また、不動産投資に際しては、購入後に「変更可能な点」と「変更不可能な点」がある。特に重要なのは、「変更不可能な点」で、それは立地に絡む箇所が多いと思われる。標高が低い(浸水の可能性)、川沿い(洪水の可能性)、忌避施設(高速道路、鉄道、工場、墓など)に近い(うるさかったり見るたびに気が沈んだりする)、埋め立て地のような地盤軟弱地(地震に弱い)などは、買った後に自力で改良することはほぼ不可能であり、このような土地を避けるだけでも、中長期的な人生の幸福度はアップする。逆に、間取りや設備(キッチン、浴室、床など)は後からいくらでも変えられるものである。これは、株式投資でも妥当する。例えば、紳士服のような斜陽産業(不動産で言えば立地)は有能な経営者でも立て直しは困難だが、どこかの家具屋のように事業として立て直し可能なのに経営者が無能なケース(不動産の間取りや設備が悪いことに相当)では、経営者交代を要求することで劇的に良くなるケースがある。
 判断が難しいのは、「眺望が良い川沿い」の立地のようなケース、つまり極めて良い条件と極めて悪い条件を包摂しているようなケースだ。ただ、これについても、株式投資で言えば「業績絶好調で借金まみれの会社」のようなものであるとみなし、個人でも法人でも「死なない」ことが最優先課題であることを考慮すると、やはり避けた方が良いように思われる。
 このような感じで、不動産購入の際に、株式投資の英知を加味するだけでも、多大な投資効果を得られると確信する。
 最後に、不動産投資は、どんなに細かな部分を検討したつもりでいても、最初の不動産投資で思いがけない難点が浮上することがあると覚悟すべきだ。その意味でも、最適な不動産は2回、3回と住み替えないと見つけることはできない。そのため、不動産については、リセールバリューを重視して買う必要性が高い。 
 え?配偶者を選ぶのにも株式投資を勉強することが役立つかって?
 私でなくソクラテスに聞いて!

大木 將充